【簡略図】
【背景】
Google Maps のような歩行ナビゲーションツールは目で見てナビゲーション情報を解釈するというプロセスが必要です。これを実際に歩行中に用いる場合、ユーザの注意がナビゲーション情報の解釈に割かれ、実環境における安全確保に割く注意が減るという問題点があります。これを解決するために、触覚や力覚を用いた歩行ナビゲーション が多く提案されていますが、これらはユーザの視覚を奪うという問題は解決しているものの、ユーザが情報を解釈するプロセスが必要である点は変わっていません。ユーザによる情報の解釈を極限まで減らし、結果としてユーザの安全性に寄与するため、情報の解釈が不要な歩行ナビゲーション手法もいくつか提案されていますが、これらは継続的な利用の困難さ、自己運動感の欠如による衝突の危険、使用可能な場所の制限という問題点が存在します。
梶本研究室ではこれまで情報の解釈が不要な歩行ナビゲーション手法の 1 つとして、不随意な回旋運動の生起を特徴として持つハンガー反射に着目し、ハンガー反射の歩行への影響を調査し、プロトタイプを開発しました。
本技術の活用・連携に意欲がある企業を歓迎いたします。
【技術内容】
ハンガー反射は針金ハンガーを頭に被ると意図せず頭が回ってしまう現象です。本現象は皮膚の圧迫により発生し、皮膚変形の向きがハンガー反射の運動の向きに影響します。また、ハンガー反射は皮膚変形の向きを工夫することで回旋運動のみだけではなく、回旋運動の生起や前後左右への並進運動も生起されます。また、頭部以外にも手首,腰部,足首にて類似の現象が確認されています。
本研究では、腰部ハンガー反射が最も効率的に歩行に影響を与えていることを確認し、空気圧アクチュエータを用いた腰部ハンガー反射制御デバイスを製作、回旋力と並進力の再現を確認しました。
本デバイスは4つの空気圧アクチュエータを用いてハンガー反射の発生に必要な圧迫を提示し、外側のアルミニウムフレームの変形と弾性によって皮膚のせん断変形を発生させるものです。
空気圧アクチュエータはそれぞれ真空ポンプとソレノイドバルブによって駆動され、大気圧センサと圧力センサによって装着者に提示する圧力を計測し、マイクロコントローラにより制御します。本デバイスが駆動する空気圧アクチュエータの位置と提示するハンガー反射による力覚の関係を下図に示します。
図の左下に示すように番号を割り振った4つの空気圧アクチュエータを独立に制御することで、皮膚圧迫(緑矢印)および皮膚ずれ(青矢印)を生じさせます。これによって皮膚ずれの生じる方向への力覚と運動(赤矢印)を生じさせています。
【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
回旋方向・並進方向ともに自在にハンガー反射を起こすことが特徴です。
Yaw 軸まわりに回旋する場合は、腰部ハンガー反射デバイスを装着した後、デバイスを左右に回しずらすことで対抗する2点に圧迫を提示し、デバイスの弾性による復元力によってせん断方向の皮膚変形が生じ、これが Yaw軸まわりのハンガー反射を生起させます。
並進方向のハンガー反射を提示する場合は、腰部ハンガー反射デバイス内側に接触子を配置し、デバイスを身体に押し込むように装着することで腰部の片側に2点圧迫を提示します。デバイスの弾性による復元力によって並進方向の皮膚変形が生じ、これが並進方向のハンガー反射を生起させます。
腰部ハンガー反射による並進力提示の様子
【連携企業のイメージ】
1.VR空間と連動した歩行ナビゲーションに関心がある企業
2.歩行ナビゲーションの応用に関心がある企業
3.他、本技術の活用を希望する企業
【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
歩行ナビゲーションに利用可能です。より小型のウェアラブルデバイス化も目指しており、実世界とVR 世界の歩行ナビゲーションへの応用可能性があります。
【技術・ノウハウの活用の流れ】
本研究にご興味があればお気軽にお問合せください。
デモ紹介や技術の詳細なご説明など対応させていただきます。
【専門用語の解説】
【ハンガー反射】
「針金製ハンガーを頭にかぶると首がひとりでに回る」という現象です。頭にかぶる以外にも他の生体部位で同様の現象が起こることが報告されています。