【簡略図】
【背景】
昨今、光学系を用いた様々な非破壊分析装置が製品化されており、研究開発用途や生産ラインの品質管理用途へ適用されています。しかしながら、多くは一種類の波長帯域、あるいは数種の波長帯域での分析に限定されていました。
本技術では、材料分析に関し、広い波長帯域にわたって6波長帯を選択して反射スペクトルの違いを抽出・分析することにより、物性面での特徴を複合的に捉えて可視化できる「マルチスペクトルカメラ」をご提案いたします。
【技術内容】
デジタルカメラの画像は1つの画素にRGB(赤・緑・青)の3 色を持ったデータとしてカラー画像を表現しています。
それに対し、ハイパースペクトルカメラで撮影した画像は、1つの画素の中に可視から近赤外までの色(=光スペクトル)を141 色(=141 バンド)の単位で撮影できる光計測器です。つまり、1 画素に141 バンド程度の独立の分光器を持っていることから、撮影によって対象物の形状が分かるだけではなく、その画素にある物体の物理的特性を判別することができます。即ち、その物体の識別や、その物体の活性度などの状態認識を同時に分析できる次世代の光計測器といえます。ハイパースペクトルカメラの機能を使えば、野菜の鮮度や職人の目など、普通の人には目に見えない現象を可視化し、且つ、それを数値化することを可能とします。
本製品は、ハイパースペクトルカメラと原理は同じですが、波長帯を6バンドに絞ったマルチスペクトルです。(任意6バンドとRGBを加えた9バンドまで広げることも可能です)
■特定の光を透過するバンドパスフィルタによる分光方式を採用しています。
■回転式ホイールにてフィルタ(計測波長)の切り替えが可能です。
■取付フィルタ(計測波長)はユーザー選択です。
■フィルタは研究分野で一般的に使われている25mm径を採用しています。
■対物レンズを用意する必要はありません(対物レンズは内蔵しています)
■大きさは177mm×10mm×100mmとコンパクト設計です。
なお、北海道衛星株式会社は、旧・北海道工業大学(現・北海道科学大学 工学部) 佐鳥新 教授が立ち上げたベンチャー企業です。現在は、北海道科学大学を退職後、千葉・札幌を拠点として研究開発を行っております。日本で初めてハイパースペクトルカメラを製品化しました。宇宙航空分野の研究から派生して生まれたスピンオフ製品です。
【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
【他のマルチスペクトルカメラとの比較】
1)純国産
-多くのマルチスペクトルカメラは海外製であり、高価です。
本製品は純国産であり、海外製と比較して安価な他、
後述する通り、お客様のご要望に応じた柔軟なサービスをご提供いたします。
2)波長の選択機能
-多くのマルチスペクトルカメラは、既に決められた波長のみを計測します。
本マルチスペクトルカメラは、ユーザーがフィルタを取り変えるだけで、所望の波長帯を選ぶことができます。そのため、用途に適した分析を容易に行うことができます。
【ハイパースペクトルカメラとの比較】
ハイパースペクトルカメラ(当社製)は141バンド域であり、分析可能なアプリケーションが広いです。マルチスペクトルカメラはバンド域が5バンド(カスタマイズにより8バンド)であるため、分析可能なアプリケーションはその分制限されますが、構造が簡易なため安価です。
用途に応じてご選択いただけます。
【サービス面】
1)テストパターンの撮影
-装置導入・リース前などにマルチスペクトルカメラの事前撮影をご要望の場合、
テストパターンの撮影を承ります。
※撮影の目的が不明瞭な場合を除きます。
2)特注カスタマイズ
-マルチスペクトルカメラ・ハイパースペクトルカメラの開発ノウハウを持ってい
ることから、用途に応じて、特注カスタマイズを施すことが可能です。
(例えば、被写体の形状に応じた光学系の最適設計を行う、ソフトウェア機能を追加するなど)
【連携企業のイメージ】
研究開発用途や、生産ラインへの導入用途などで適用可能です。
例えば、下記の企業へご提案が可能です。
1)複数の波長帯の分光スペクトルを測定したい企業。
2)複数の波長帯の分光スペクトルを測定したいが、ハイパースペクトルカメラほどのバンド数(例:141バンド)までは必要ない企業。
3)複数の波長帯の分光スペクトルを測定したいが、従来のマルチスペクトルカメラでは任意の波長帯を選ぶことができずに波長帯の選択で課題を持っていた企業。
4)海外製のハイパースペクトルカメラ、マルチスペクトルカメラを利用しているが、価格面・性能面で課題があり、分析が不十分であった企業。
(本製品では波長分解能の強調機能が確立されており、また、用途に応じた本製品の特注カスタマイズなど、ご提案いたします)
なお、当社ではハイパースペクトルカメラの販売も行っています。
詳しくは下記をご参照ください。
【純国産ハイパースペクトルカメラによる非破壊検査法】
http://www.open-innovation-portal.com/corporate/manufacture/hyper.html
【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
複数の波長帯の分光スペクトルを得ることで、様々な分析を行うことができます。
マルチスペクトルカメラを使用した利用例として、下記は植物の光合成能力を図ることができる波長を含めたフィルタ組み合わせです。フィルタは532nm(band1)、570nm(band2)、660nm(band3)、750nm(band4)、760nm(band5)の5種類を選びました。植物は、波長によって見え方が異なり、band4とband3を組合せることで、正規化植生指数光合成(NDVI)と呼ばれる光合成の活性度を数値化することが可能です。
なお、複数の波長帯を一括測定することによってどのような分析が可能か、ハイパースペクトルカメラ(141バンド)を利用した場合の事例を下記のとおりご紹介します。
【人体用途】
1)飲酒後(左)と飲酒前(右)です。飲酒運転の防止などに活用可能です。
2)眼底検査、網膜診断、瞳孔検査、皮膚損傷、色素障害の計測など。
3)アルコール検査のほか、偽造通過・チケット・書類の評価判定、麻薬、血痕、印刷物の表層物検出、特殊印刷や偽造防止技術の研究、整形手術の痕跡検査など、犯罪防止用途にも適用可能です。
【医療用途】
1)正常部位と癌部位でスペクトルが異なるため、癌組織の検出が可能です。
2)皮下の血管状態の判別が可能です。
3)タンパク質、アミノ酸、カルシウム、DNA、RNA関連の計測も可能です。
【工業用途】
1)誘電体膜の空間分布の検査例です。数nm単位の膜厚誤差が測定可能です。
フィルムやガラスコーティングのムラ・異物・欠陥計測や、成膜プロセス管理、半導体ウエハー検査など、様々な膜厚検査・膜厚管理用途へ適用可能です。
2)LCDのカラー計測や品質管理など、異物検出用途へ適用可能です。
3)電子材料のスペクトルセンシングや材料の吸収/反射/透過特性の分析など材料の検査・分析用途に適用可能です。燃焼反応(メタン等)の分析も可能です。
【食品用途】
1)肉類、魚類の鮮度評価が可能です。
菌類の分布についても可視化できるため、例えば、生レバーの安全性評価(内部のO157など)などにも活用可能です。
2)農産物の生育モニタリングや収穫時期予測や、花の開化時期予測、気候変動に強い農産物研究や遺伝子組み換え食品の品質測定などにも適用可能です。
3)同色(トマト・パプリカ・りんごなど)でも、スペクトルの違いから見分けることが可能です。食肉生産ラインでの検査や分類自動化、糖度測定、成熟度測定、食品中の異物混入分析なども可能です。
4)農薬を可視化することが可能です。安全性評価に活用できます。
【化粧品、医薬分野】
1)ファンデーションの皮膚への乗り具合を可視化できます。
2)肌の水分量、カサツキを可視化可能です。
3)錠剤スペクトルデータの測定や、生体の液中濃度測定、毒素物検査、調剤調合プロセスの品質管理、創薬研究などに活用可能です。
【リモートセンシング】
- 木や草の植生分布を可視化できます。品種に応じた分析も可能です。
2)鉱物資源(レアメタル等)の探査、鉱物内の材料分析、鉱物採掘プロセスのモニタリングなどへ適用可能です。
3)災害・薬害・環境変動の計測、環境汚染の計測、海洋計測等にも活用可能です。
【技術・ノウハウの活用の流れ】
既に製品化しており、販売が可能です。お問い合わせ後、製品の詳細なご説明、ご提案をさせていただきます。
また、目的とする材料分析がマルチスペクトルカメラにて可能かどうかご不明な場合、テストパターンの撮影に関してもご提案させていただきます。ご相談ください。
【専門用語の解説】
【反射スペクトル】
電磁波をプリズムや回折格子といった分光器を通すことにより得られる、電磁波の波長ごとの強度の分布を分光スペクトルと呼びます。
分光スペクトルには数種類存在しますが、そのうち、対象物に光を当てたときに反射するスペクトルを反射スペクトルと呼びます。
マルチスペクトルカメラでは材料の反射スペクトルを計測しています。