【簡略図】
【背景】
マイクロ波発振器としては電子レンジ等でも用いられているマグネトロンが有名ですが、近年では半導体を用いたマイクロ波発振器も知られています。
半導体を用いたマイクロ波発振器は、マグネトロンに比べ小型化・軽量化が可能なのはもちろん、周波数や出力の安定性が高いのが特徴です。このため、プラズマ生成やファインケミカルなど、周波数や出力の精密制御が求められる用途に適しています。
一方、プラズマ発生装置は、表面改質、薄膜形成、熱加工など、産業界の様々な用途で利用されています。多くのプラズマ発生技術は、真空装置を必要とするものであり、主にコスト面で課題がありました。また、利用場面も限定されてしまいます。大気圧下でプラズマを発生させる製品も出始めていますが、様々な課題が残っていました。
株式会社プラズマアプリケーションズでは、上記の課題を解決するマイクロ波発振器およびプラズマ発生装置を開発しています。本技術の活用を希望する企業を歓迎します。
なお、株式会社プラズマアプリケーションズは、静岡大学(旧)電子科学研究科 神藤 正士名誉教授が立ち上げた大学発ベンチャー企業です。
【技術内容】
株式会社プラズマアプリケーションズによるマイクロ波発振器はLDMOS FETまたはGaNFETを使用し、プラズマ生成やファインケミカルなど、周波数・出力の精密制御が必要な用途に適するとともに、小型・高効率・長寿命を実現しました。
株式会社プラズマアプリケーションズによるプラズマニードルは、大気圧下で利用可能なプラズマ発生装置であり、今までの大気圧プラズマ発生装置の多くの課題を解決しています。特に株式会社プラズマアプリケーションズによるマイクロ波発振器と組み合わせることにより、優れた性能を発揮します。
【2.45GHz マイクロ波発振器 MPS-10A/10B】
2.45GHz マイクロ波発振器 MPS-10A/10Bは、様々な用途、特に以下の用途に利用可能です。
・低圧ガス放電や小容積プラズマ発生用
・局所マイクロ波加熱
・ファインケミカル用途
MPS-10Aの外観は以下の通りです。電源と比較しても小型です。なお、10A/10Bの違いは出力固定/可変の違いです。
特長としては以下の点が挙げられます。
・LDMOS FETまたはGaN FETを使用、対AC電力変換効率:50~60%
・小型 (116x82x42.3mm)、軽量
・長寿命(>5万時間)
・反射電力モニター(オプション)
・MPS-10A:出力固定(10W)、MPS-10B:出力可変(0~10W)
装置サイズは以下の通りです(図中単位はmm)。
主な仕様は以下の通りです。
【プラズマニードル(発生装置)】
2.45GHz 帯のマイクロ波とアルゴンガスの噴射を利用することにより、大気圧下でプラズマをニードル状に発生することが可能です。アンテナを金属管(上図右側の管状突起部)内部に収容しており、マイクロ波の外部への漏えいを低レベルに抑えています。
原理は以下の通りです。
1)固体マイクロ波発生器へAC→DC 電源から電力を供給する。
それにより、マイクロ波をアンテナ(金属管内。直線状または螺旋状)から放射する。(マイクロ波の出力等によって、プラズマの温度を調整可能)
2)アルゴンガス等を金属管内に通して噴射する。
3)マイクロ波放射部とアルゴンガス等の接触部にてプラズマが発生する。
4)プラズマは、ガスの噴射に沿って、ニードル状に伸びる。
(そのため、ガスの流量によって、ニードルの長さが変わる)
プラズマニードルの寸法は以下の通りです(単位はmm)。テーパリングされた金属管の開口部からプラズマニードルが噴射されます。バッファガスは反対側や側面から供給できます。
主な仕様
*プラズマニードル先端部の温度は、マイクロ波入力、ガス流量および混合ガス種に依存します。
【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
【2.45GHz マイクロ波発振器 MPS-10A/10B】
本技術の特徴は以下の通りです。
1)高効率・小型・長寿命である。
2)周波数や出力の安定性が高い。
小容積プラズマ発生用、局所マイクロ波加熱、ファインケミカル用途など様々な用途に利用可能です。
【プラズマニードル(発生装置)】
他の大気圧プラズマとして、13.56MHz 帯(高周波)を利用したプラズマの技術がありますが、本技術では、2.45GHz 帯のマイクロ波を利用し、かつ独自の機構を考案することにより、様々なメリットを生み出しました。本技術の特徴は以下の通りです。
1)同軸ケーブルを利用でき、全体のハードウェア構成がシンプルで小型かつ安価。
利用しているガス(バッファガス)はアルゴンであり、安価です。前述の固体マイクロ波発振器と組み合わせることで、小型かつ安価に安定的にプラズマを生成できます。
2)大気圧プラズマであること。
高価かつ大型の真空チャンバー等が必要ありません。作業も容易です。
3)マイクロ波入力とバッファガスの組成・流量の調整で多様な用途に適合。
基本的にバッファガスにはアルゴンを用いるため、オゾン発生が少なく、大気成分の混入の少ない状態でプラズマを生成できます。一方、アルゴンに酸素または空気を混入すると活性酸素がプラズマニードル内に生成され、化学反応を促進します。このように、マイクロ波入力とバッファガスの組成・流量を調整することにより、多様な用途への応用が可能です。
4)安定的に温度制御が可能。
マイクロ波入力10W以下の場合、プラズマニードル先端部の温度は70℃以下。但し、プラズマニードル先端部の温度は、マイクロ波入力、ガス流量および混合ガス種に依存します。プラズマを照射する対象物(例えば、基板)上に温度測定センサを設け、これと同期させれば、精密な温度制御も可能です。
なお、マイクロ波入力20W以上になると、プラズマ温度が上昇して熱化します。
5)低消費電力(1W~20Wの低マイクロ波電力)であり、バッテリー利用も可能
極めて低消費電力であるため、ランニングコストを抑えることができます。また、その特徴を生かし、バッテリーの内臓や、非接触ワイヤレス給電(磁界共鳴方式など)との組み合わせにより、電源レス・配線レスが可能です。
無線モジュールを組込めば、遠隔地からの操作も可能です。
6)微細加工が可能
スポット径は現状、2~3mm 程度であり、局所プラズマに向いています。更にスポット径を小さくできる余地もあります。また、プラズマトーチを束ねる、あるいはガス流を工夫することにより、径を広げることは可能です。
7)環境にやさしく、人体へ安全であること。
放電にアルゴンを使うため副産物のオゾンなどがほとんど発生せず、マイクロ波の漏えいも少ないため人体に対して高い安全性があります。
[真空型プラズマ発生装置との比較]
高価な真空装置が必要です。真空引きが必要なため、操作には熟練者や、手間が必要です。また、プラズマ密度が低く、反応性が悪いなどの問題もあります。
[他の大気圧プラズマとの比較]
他の大気圧プラズマの多くが誘電体バリア放電を利用しており、ほとんどが大面積向けです。そのために電力も相当程度必要です。プラズマの制御が難しいため、温度安定性などの課題もあります。また、プラズマ発生に伴う反応ガスの副生物として、オゾン発生が著しいなどの問題があります。
プラズマトーチ状のアプリケーションも一部出てきていますが、1)大きな消費電力を必要とするもの、2)温度制御可能な範囲が狭い(多くは熱プラズマ)、あるいは温度制御が難しく、放電形状の変化や電極の消耗を伴うもの、3)高価なヘリウムあるいはヘリウム混合ガスを用いるものなど、課題があるものが多いと言えます。
【連携企業のイメージ】
本装置の導入や本技術の応用を希望する企業を歓迎します。例えば下記の企業等と連携可能です。
1)マイクロ波プラズマ装置やその応用に関わる企業・研究機関
2)プラズマに限らずマイクロ波回路やその応用に関わる企業・研究機関
3)プラズマプロセスを工程に導入している企業、あるいは、新たにを検討している企業、
4)プラズマプロセスの電源レス化・配線レス化、あるいは遠隔制御を希望する企業。
5)医療用途への治療装置を開発・販売している企業。
6)本技術を元にした事業展開へ意欲的な企業。
【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
プラズマニードルは多くのプラズマプロセスへ展開可能です。例えば、以下の用途へ展開可能です。
1)接着性/塗装性の向上
※応用例:はんだの接着性、難接合プラスチックの接着性
2)親水性/撥水性の向上
※応用例:ガラス表面濡れ性向上
3)その他の表面改質やエッチング等
4)薄膜形成
※応用例:炭素薄膜など。
5)クリーニング/有機物の分解
※応用例:VOC 分解
また、低温プラズマの利点を生かし、新たに治療用途への展開可能性があります。
6)治療用途
※応用例:殺菌滅菌応用、身体表面の疾患治療(近年注目されています)
【技術・ノウハウの活用の流れ】
大気圧プラズマニードルの実験装置は用意可能です。技術の詳細なご説明もいたし
ます。用途についても、お気軽にお問合せくださいませ。
【専門用語の解説】
【LDMOS FET (Laterally Diffused MOS FET)およびGaN FET】
LDMOSFET:チップ上でドレイン近傍の不純物を横方向に拡散した構造を有するMOS FETです。耐圧が高く、従来、携帯電話基地局のパワーアンプなどに利用されていました。
GaN FET:窒化ガリウムを用いた電界効果型トランジスタで、耐熱性と変換効率の面で最新の高出力トランジスタ。年ごとに価格が低下したことにより急速な普及が始まっている。
【大気圧プラズマ】
大気圧下で発生させたプラズマです。一般に、プラズマは発生させるときの圧力が低くなると電子の平均自由行程が放電の開始と維持に適した長さになるために、定電圧低電力で済み、プラズマを制御しやすいといった特徴があり、
そのためにプラズマは0.01Pa以下で発生することがほとんどでしたが、昨今では大気圧下で発生する技術も進展しています。