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電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 助教
須藤 克弥
- 情報通信
- 社会基盤
深層学習は電波伝搬を再現できるのか?
IoT時代の社会では、IoTデバイスのセンシングやロボット/自動車の遠隔操作、更にはVR/ARやホログラム転送など、これまでにないアプリケーションの登場と共に、無線通信システムに求められる通信要求の組み合わせが複雑化しています。
須藤研究室では、昆虫の相変異の様に通信端末自身が通信要求・無線環境に適応しながら通信方式を決定する「ポリフェニズム無線システム」の実現を目指しています。特に、無線システムが相変異を実現するための基盤技術である無線ビッグデータ解析技術の研究開発に取り組んでいます。
深層学習を活用することで、空間的な電波伝搬特性を予測する技術、将来的に発生する無線トラヒック量を予測する技術、ユーザの体感品質を推定する技術を確立しています。また、これらの無線ビッグデータ解析技術を活用したエッジコンピューティング技術、空間的周波数共用技術、給電・データ同時伝送技術、遠隔操作支援技術といった研究にも取り組んでいます。
超省電力な携帯端末を実現するエッジコンピューティング技術
VR/ARやAIなど高負荷な計算処理を必要とするアプリーケーションの登場により、携帯端末のCPUの消費電力は年々増加しており、小型でウェアラブルな携帯端末を実現するボトルネックになっています。本研究室では、高負荷なアプリケーションを無線で接続したエッジサーバ上で仮想的に計算処理することで、携帯端末は処理結果を表示する機能だけ持つ「ゼロクライアント端末」の研究に取り組んでいます。
▼ 電波マップを活用した空間的周波数共用技術
Beyond 5G、6Gに向けて、IoT通信やドローン通信、8K配信など無線の用途が拡大し続けており、周波数資源は限界を迎えています。増え続ける無線要望に対して周波数を持続的に確保するために、本研究室では、異なる無線システム間で空間的に同一周波数を協調して利用する「周波数共用技術」の研究に取り組んでいます。深層学習を活用した電波マップ構築技術により無線システム間の干渉状況を高精度に把握することで、干渉しない瀬戸際で周波数を共用できることが可能となります。
▼ 給電・データ同時伝送技術
現実世界のあらゆる事象をディジタル情報としてサイバー世界に取り込み、活用しやすい情報や知識を抽出し、現実世界にフィードバックするDigital Twinを促進するためには、情報を収集するためのセンサーがメンテナンスフリーになる必要があります。本研究室では、無線基地局がマイクロ波帯を用いて無線給電とデータ通信を同時に行うSWIPT技術の研究に取り組んでいます。無線品質の統計学習による給電量予測を活用した高周波数利用効率なアクセス制御方式を提案しています。
▼ 自律走行車の遠隔操作支援技術
須藤は子供の頃「ラジコンのように車を走行できないか」と妄想していました。現在、この遠隔操作技術は自動運転を実現する切り札として着目が集まっています。自律走行車の遠隔操作では、LiDARなど大量なセンサや運転指示を出すAIの代わりに、撮影した画像を遠隔地のオペレータに伝送し、モニターを見ながら人がラジコンを操作する様な感覚で車を操作します。須藤研究室では、携帯電話網を介して安定的に遠隔操作できるシステムの実現を目指し、常に遅延なく映像を伝送できる通信方式の研究に取り組んでいます。