法政大学 マイクロ・ナノテクノロジー研究センター 客員研究員

田沼 千秋

  • その他
  • ものづくり

新データフォーマットによる付加造形技術

研究テーマ:AM(付加造形)技術の研究

▼ 付加造形・積層造形に適したUV硬化形インクジェットインクとその硬化プロセスの研究

UV硬化形インクジェットインクには,ラジカル重合形とカチオン重合形がある.前者は,アクリルモノマーを主剤に用いるものが多く,比較的安価で,多様な特性のインクを用意することが可能である.しかし,酸素阻害や造形物内部の硬化には大きなエネルギーが必要などの課題がある.一方,カチオン重合形インクは,UV光が照射されると硬化に必要なプロトンが発生し,インク層の内部まで拡散して反応が起こる.主剤にエポキシ系樹脂を用いることで,耐熱性に優れ,立体物の強度を高めることができることが特徴である.

図1は,UV硬化形インクジェットインクを用いて,微細な(直径0.5mm)の円柱を試作した例である.一回に積層するインクの量を最大にすることで,造形する時間を短縮(~1/10)することが可能である.また,白顔料を含むインクにおいても同様の作製方法で微細な円柱を作成することができた.
カチオン重合形インクジェットインクにより,積層造形の時間短縮が可能であることが分かった.

 

▼ ヘッド固定ステージ可動形プリンタの研究
(法政大学 デザイン工学部 田中 豊研究室と共同研究)

3Dプリンタは,一定の肉厚の層を重ねて立体を造形する2次元プリンタをベースにしたラスタースキャン方式で、かつモールド材を使ったFDM 方式が主流のため工業製品への応用を考える上では制限が多く、次のような要求に答えていく必要がある。以下に主な課題を挙げる.

* 造形制限のないフレキシブルな立体造形
* 高速、高精度、高精細な立体造形
* 異種材料を組み合わせた複合立体造形

図2に,試作したパラレルリンクメカニズムによるヘッド固定ステージ可動式3Dプリンタの外観を示す.このプリンタは,カチオン重合形インクジェットインクとの組み合わせることで,上記課題を解決するとともに,以下のような特徴を実現できる.

・造形時間やサポート材コストの削減を実現するベクトルスキャン方式を可能にする多自由度造形機構である.
・独自のカチオン重合モノマーの開発と最適なインク組成の開発により造形物に反応残渣が残らないインクシステムである.
・フルカラー化を実現する色構成方法を開発し、自由曲面を持つ既存の構造体に構造付加を行う、3次元の付加造形を可能にした.(特許出願し権利化済)
・カチオン重合UV硬化型のインクに適正のあるインクジェットヘッドと硬化用UV光源の選定及び、最適配置を行い、小形化したインクジェットシステムである.

 

 

▼ 付加造形・積層造形用UV硬化形インクジェットインクとその噴射ヘッド制御の研究

UV硬化形インクジェットインクを用いるインクジェットヘッドは,比較的高粘度のインクを安定に吐出するための工夫が必要である.インクを加温してインク粘度の適正化をすること,インク供給システム,メンテナンスシステムなどの最適化により,インク液滴の安定吐出のための研究を行っている.

 

 

▼ 液体塗布ヘッドとその応用研究

付加造形・積層造形には,様々な材料が検討されている.多様な材料を適切の塗布するヘッドについて研究を行っている.多様な液体の噴射過程,液滴の飛翔を観察することで,目的とする液滴の形状に適した液体の物性値を示すことを目標としている.