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北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授
渡慶次 学
- ライフサイエンス
- 環境/アグリ
ポータブル装置を用いたオンサイト迅速分析
私たちは、ポータブル蛍光偏光測定装置を用いた蛍光偏光免疫分析法(FPIA:Fluorescence Polarization Immunoassay)により,簡便・迅速かつ定量的な分析・診断が可能になると考えています。
FPIAは均一系免疫分析法の1つであり、偏光度Pをパラメーターとする分析法である。
蛍光標識した抗原を抗体と反応させることで、抗体量に応じた蛍光標識抗原-抗体複合体が形成されます。蛍光標識抗原-抗体複合体は、フリーの蛍光標識抗原より溶液中での回転運動が抑制され、その変化を偏光度差ΔPとして検出できる[1]。
FPIAは、抗体の固定化が必要なく、試薬を混合するのみで反応が完結するため、非常に簡便かつ短時間で測定可能というメリットを持っています。
このようなFPIAの利点をさらに活かすため、私たち研究グループはポータブル蛍光偏光測定装置を開発しました[2][3][4]。本装置は、液晶素子とイメージセンサー(CMOS)を組み合わせた、蛍光偏光イメージングシステムを採用しています。
液晶素子の変調周波数とCMOSカメラの取り込み周期を同期しすることで画像を取得・演算し、偏光度を2次元画像として算出します。これにより、CMOSカメラ視野内の複数サンプルの同時測定が可能となり、マイクロ流体デバイスと組み合わせることで500サンプルの同時測定にも成功しました[4]。また、光学系の最適化配置により持ち運び可能なサイズ・重量を実現し,屋外での使用も可能になりました。
さらに、抗体の代わりに抗体フラグメントを利用した新しい非競合FPIAを開発しました。これにより、従来は主に低分子の分析・診断に用いられてきたFPIAを、タンパク質やウイルスの測定にも応用することが可能になりました[5][6][7]。
1. D. S. Smith, S. A. Eremin, Anal. Bioanal. Chem., 391, 1499-1507 (2008).
2. O. Wakao, K. Satou, A. Nakamura, K. Sumiyoshi, M. Shirokawa, C. Mizokuchi, K. Shiota, M. Maeki, A. Ishida, H. Tani, K. Shigemura, A. Hibara, M. Tokeshi, Rev. Sci. Instrum., 89, 0240108 (2018).
3. O. Wakao, M. Maeki, A. Ishida, H. Tani, A. Hibara, M. Tokeshi, Sens. Actuators B, 285, 418-422 (2019).
4. O. Wakao, K. Satou, A. Nakamura, P. A. Galkina, K. Nishiyama, K. Sumiyoshi, F. Kurosawa, M. Maeki, A. Ishida, H. Tani, M. A. Proskurnin, K. Shigemura, A. Hibara, M. Tokeshi, Lab Chip, 19, 2581-2588 (2019).
5. K. Nishiyama, Y. Takeda, M. Maeki, A. Ishida, H. Tani, K. Shigemura, A. Hibara, M. Tokeshi, Sens. Actuators B, 316, 128160 (2020).
6. M. Fukuyama, A. Nakamura, K. Nishiyama, A. Imai, M. Tokeshi, K. Shigemura, A. Hibara, Anal. Chem., 92, 14393-14397 (2020).
7. K. Nishiyama, M. Fukuyama, M. Maeki, A. Ishida, H. Tani, A. Hibara, M. Tokeshi, Sens. Actuators B, 326, 128982 (2021).