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岩手県立大学 研究・地域連携本部 教授
柴田 義孝
- 情報通信
- 社会基盤
次世代道路状況情報プラットフォーム
国土交通省制定の「積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法」により、日本の国土全体の60%以上が積雪寒冷地域として指定されており、そのほとんどが中山間地域である.この地域においては近年急激な人口減少による過疎化の進行により、公共交通機関の縮小も相まって、高齢者でさえ自動車の運転が求められることから、常に安心・安全に通勤、通学、通院、買い物等ができるための道路環境が益々重要となっている.
しかしながら積雪寒冷地域においては、慢性的な悪条件の道路環境(吹雪、凍結、積雪、雪崩、豪雨、冠水等)での運転が余儀なくされ、運転者の高齢化や異常気象や災害による交通事故は年々増加している.特に冬季の積雪・凍結路におけるスリップ事故は人命に関わる大事故につながっている.また中山間地域の道路周辺の通信環境は都市部と比較すると、携帯網の電波が不安定または不感帯のいわゆる劣悪通信状態の箇所も多く、一旦交通事故や大規模災害が発生すると情報の収集・伝達・共有が遅れ、住民の安心・安全の確保が困難となっている.
本研究では、人口減少と過疎化・高齢化が加速する積雪寒冷地域や中山間地域において、慢性的な悪条件の道路環境における住民の安心・安全な運転を向上するための次世代広域道路状況プラットフォームを実現する.そのため車両に最新の多様なIoTセンサ群(9軸力学センサ、近赤外線レーザセンサ、遠赤外線温度センサ、準静電界センサ、温湿度センサ、GPS)を搭載し、これらのセンサデータを周期的に車載サーバに取込み、AI技術により道路状況を迅速かつ正確に判定する。その結果を先進的な異種規格無線(LPWA,5G,Wi-Fi6)の多重化によるコグニティブ無線法を新たに開発する。そして長距離(最大2Km)で大容量通信性能(最大250Mbps)を確保しつつ、車車間や車路間通信によって走行車両や路側機と相互に交換・共有することにより、道路GISデータとして電子地図上に危険個所や道路状況を可視化することにより運転者にリアルタイムに注意喚起を促すことが出来る.
さらにこれらの道路状況情報を路側機に集積してクラウドに送り、かつ気象庁からの気温、湿度、気圧等の広域の気象メッシュデータ(1Km平方を想定)をクラウドに集積しビッグデータとして解析し、現時刻から先の道路状況を予測できる広域道路状況プラットフォームを開発する。公共交通機関(バス運行会社や道路管理団体)との連携による社会実験を通して社会的効果や有用性をあきらかにする。
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