物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 光機能分野 プラズモニクスグループ グループリーダー

宮崎 英樹

  • ものづくり
  • 機能性材料

応答速度1msのメタマテリアル赤外線NO2センサ

▼ 背景
・分子固有の吸収スペクトルを利用する赤外式ガス計測には応答の遅い熱型赤外検出器が広く用いられている
・高感度、高速な量子型赤外検出器としては、これまで有毒な水銀やカドミウムを含むHgCdTeが使われてきた
・我々は低毒性のメタマテリアル赤外検出器を開発し、HgCdTe検出器に匹敵する感度、速度を実証してきた

▼ 狙い
・複合メタマテリアルにより2波長を独立に吸収するフォトンソーティング現象を世界で初めて検出器に応用
・赤外式ガスセンサに必要な2枚のフィルタと2個の赤外検出器の機能を1つの検出器に集積化
・これまで煩雑な化学発光方式で実現されていた応答速度1 msの高速NO2検出を、簡便な赤外線方式で実現

▼ 概要
・量子井戸をAuで挟み込んだストライプ型共振器が基本構造
・メタマテリアル特有のフォトンソーティング現象を応用
– 幅の異なるストライプ型共振器を交互に配列(図1)
– 2つの波長の光が対応する共振器に自発的に集まる(図2)
・Ch. 1の感度ピークをNO2の吸収波長に一致させた(図3)
・現在は冷却が必要だが量子井戸の変更により室温動作可能
・2波長の赤外透過強度の比率からガスの濃度がわかる(図4, 5)
・エンジン開発には応答速度数msのNO2濃度計測が必要
従来技術:化学発光チャンバをエンジンに直結して計測
本方式:排出ガスの赤外透過を測るだけで濃度がわかる
・NO2濃度の3.2 msの高速変化の測定を実証(図6)
(検出器自体の応答速度は1 ms以下)

▼『メタマテリアル』とは?
光の波長よりも十分に小さな構造を作り込むことにより、自然界に存在する材料では実現しえない光学特性を持たせた人工材料
ここでは、本来は微弱な感度しか持たない量子井戸を、特定の波長で実用的な感度を持つように人工的に改変

▼ 応用分野と今後の展開
・メタマテリアル、量子井戸の設計変更により他のガスにも適用可能(CO2, CO, NOx, SOx, 炭化水素, フロン,,,)
・環境計測、農業、医療

▼ 実用化へ向けた課題
・量子井戸構造の最適化による感度の向上
・量子井戸構造の改良による動作温度の向上
・狭帯域化によるガス選択性向上

▼ 研究紹介動画