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電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 准教授
守 裕也
- ものづくり
- 環境/アグリ
省エネなモノづくりに貢献する流体制御
飛行機などの燃料に代表される輸送コスト低減の為には,流体から受ける抵抗を減らす事が一つの有効な手段です。
物体の壁面とその周りの流れの間に生じる摩擦抵抗はその流体抵抗の一つであり,低減による輸送コスト削減への寄与は大きいと言われています。
しかしその多くは乱流状態になっており、取り扱いが非常に難しくなっています。一方で、乱流は工学上様々なところで見られることから、乱流を自由自在に制御することは工学上極めて重要です。
例えば乱流を弱めることで、先述の流体抵抗の一つである摩擦を減らすことができます。
逆に乱流を増やすことで熱伝達を活発化することができます。
本発表では、本研究室で行われている乱流制御に関する基礎研究をいくつか紹介いたします。
1. 乱流の抵抗低減
高速遊泳するイルカ腹部の微小振動からヒントを得た進行波制御を紹介します.この制御により乱流による摩擦抵抗の約70%削減が可能です.さらには排熱を使うことを想定した加熱冷却による抵抗低減技術も紹介します。これらの技術は、飛行機や電車、船舶など乗り物における流体抵抗低減や燃費削減、配管などにおける流体の輸送効率の向上が考えられます.
2. 熱伝達の促進
一般的に熱交換器では細い冷媒流路を多数配置することで全体として表面積を稼ぎ,熱交換効率の増加を図っていますが、それぞれの冷媒流路は流路径が小さく,冷媒流からフィンおよび空気への熱伝達が小さい流れとなっています.この点が熱交換器の高効率化および小型化においてボトルネックとなり、なんらかの方法により各冷媒流路の熱交換効率を増加させることが必要です.
本発表では、流路径が小さい流れにおいて劇的に熱伝達を促進させる技術を紹介します。この技術は、例えば人間の食道において食道の壁が波打ち食べ物や飲み物(物体および流体)を胃まで輸送する蠕動運動を用いた制御技術です.従来技術では両立の難しい摩擦抵抗低減と熱伝達促進の同時達成が可能であることも発見しています.
3. 粒子付着抑制・促進技術
鮫肌に代表されるリブレットやハスの葉などの超撥水面などを応用した制御を紹介します.最新の研究から、これらの制御技術は空気中・水中に浮遊する粒子やゴミを回収する能力を持っていることが、わかりつつあります。この制御の工学応用への可能性を紹介いたします.
▼ 参考記事
https://www.uec.ac.jp/research/information/opal-ring/0007382.html
▼ 研究紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=yttYvF8mHyk&feature=youtu.be