物質・材料研究機 構造材料研究拠点 解析・評価分野 腐食特性グループ 独立研究者

土井 康太郎

  • その他
  • 社会基盤

酸素還元反応促進による新たな腐食加速試験

▼ 背景
・実環境における構造材料の腐食反応は非常に長い時間をかけて進行するため実験室での再現が難しい。
・従来の腐食加速試験法はほとんどが酸化反応の加速しか行っておらず、実環境の腐食を再現できていない。
・構造材料の腐食を律速しているのは、材料が接する水溶液中の「酸素の拡散」。

▼ 狙い
・腐食反応=金属材料の溶解(酸化反応)と生じた電子の消費(還元反応)のカップリング。
・酸化反応:M → Mn+ + ne-  還元反応:O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-。
・還元反応の主反応である酸素還元を促進することで腐食反応を底上げする新手法を提案。

▼ 概要
〇高酸素腐食促進試験法の開発
中性~アルカリ性環境での腐食反応は酸素還元律速
→試験環境に酸素ガスを供給して酸素還元反応を促進

・鋼材の溶解反応の対反応である酸素還元反応を促進させ、腐食反応全体を底上げする手法
※高酸素腐食促進試験法(特許第6744629号)

・耐圧ガスチャンバーに高圧酸素を供給(最大2.1 MPa、大気圧下の100倍)
電気化学測定、各種センサにより試験中の腐食挙動をモニタリング
(電位測定、・インピーダンス測定、・塩分センサ、・酸素還元センサ)
(温湿度センサ、・pHセンサ)

〇モルタルに埋設した鉄試料の腐食促進
試料:純鉄 7×7×1 (mm3)
モルタル作製条件:水セメント比60%, セメント細骨材比1:3
練り混ぜ水に2.06 M NaCl溶液を使用、試験期間:14日間
酸素圧に比例して腐食を促進 実環境と同等の鉄さびを再現

〇高酸素腐食促進試験を用いた応用研究
コンクリート中鉄筋腐食
新開発の鉄筋、補修材の評価
試験法の簡便化・高効率化
表面処理への応用

▼ 応用分野と今後の展開
・あらゆる金属材料と環境の相互作用の基礎検討
・大型構造物、電子部品、医療材料の腐食への展開
・腐食反応を利用した表面処理法への展開

▼ 実用化へ向けた課題
・鉄以外の金属材料への適用
・コンクリート以外の環境への適用(水溶液腐食、大気腐食)
・規格化 → 本試験法を腐食加速試験法のスタンダードに