日本には弊社を含めて全国にTLOがありますが、その活動は広く知られておらず、関連する情報も分散しています。新しく産学連携業界に入った方は、TLOについて触れる機会も少ないので、本コラムにてご紹介します。
TLOは内部型・広域型の2種類に大別されますが、広域型のTLO組織としては主に下記が挙げられます。
■株式会社TLO京都 https://www.tlo-kyoto.co.jp
京都大学をはじめとする連携大学のエイジェントとして、連携大学で生まれる知的財産を産業界へ橋渡しします。1998年10月に関西ティー・エル・オー株式会社として設立し、2019年10月に株式会社TLO京都へ商号変更されました。京都大学や九州大学をはじめとして様々な大学の知的財産権の技術移転に取り組んでいます。2016年1月には京都大学が発行済株式数の68.2%を取得しています。
2019年5月28日には文部科学省にてイノベーション・マネジメント・ハブ形成支援事業の説明会及びマッチングイベントがありました。関西TLO株式会社の資料として下記が公開されています。
関西TLOのご紹介
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/17/1415817_4.pdf
事業の詳細は特定非営利活動法人産学連携学会の学会誌で下記のように掲載されています。
関西TLOの目指す産学連携
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsip/13/2/13_2_43/_article/-char/ja/
■株式会社東北テクノア―チ https://www.t-technoarch.co.jp
大学等で創出した知的財産を活用した新規事業・産業の創出を支援することを目的として、東北地域の国立大学ならびに高専の教官有志等の支援により、1998年11月5日に設立されたTLOです。本社は東北大学未来科学技術共同研究センター2階であり、大学等の研究成果を技術移転するにあたり、主として「発明評価」と「知的財産活用促進」を行っています。
事業の詳細は特定非営利活動法人産学連携学会の学会誌で下記のように掲載されています。
東北テクノアーチのこれまで,そしてこれから
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsip/13/2/13_2_13/_article/-char/ja
取組の一例として、下記がWebサイトで紹介されています。
科学的根拠に基づく高付加価値日本食・食産業研究開発プラットフォーム
https://www.knowledge.maff.go.jp/platform-case-2019/01.html
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プラットフォームの目的
(目的・特徴)
科学的根拠を新製品・新加工技術の開発、各種戦略のキーに位置づけ、日本食産業の産学連携研究開発の醸成の場となることを目的とする。専門家集団(プロデューサーチーム)がその機能を担う。
(中長期ビジョン)
新たな生物素材やメタボローム解析技術等を活用した科学的根拠に基づく製品の開発
国内外の様々なエリアの市場ニーズを見据えた地域性豊かな加工食品の改良開発
(目標とする成果)
農林水産品の高度加工、科学的根拠に基づく高付加価値商品の切れ目ない輸出展開
新たな日本食市場の創出と食産業の成長産業化を達成
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■株式会社四国TLO https://www.s-tlo.co.jp
四国地域の社会と産業の活性化を図るため、四国の大学教員が中心となって、 技術移転機関「株式会社テクノネットワーク四国」が設立されました。四国の大学等(香川大学、徳島大学、鳴門教育大学、愛媛大学、高知大学など)の特許等の技術移転に止まらず、国や県ならびに民間の機関の全面的な協力のもと、 企業の研究開発の支援、企業間の技術や事業の交流など幅広い活動を行ない、 四国地域における技術開発のワンストップサービスを目指しています。
事業の詳細は下記の文献で紹介されています。
四国 TLO インタビュー −イノベーションの創出に向けて−
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/2991
■株式会社信州TLO http://www.shinshu-tlo.co.jp
長野県経済の活性化のために信州大学や長野高専等の研究活動の活性化を図り、大学等の研究成果を世に出すために設立したTLOです。全国で32番目の承認TLOとして信州大学及び長野工業高等専門学校の技術をベースに事業を行っています。
・技術移転事業 特許・技術情報の企業への提供とライセンシング活動
・共同研究/委託研究の仲介、技術指導等の技術移転業務
・特許の取得/権利化支援
・大学/高専等の技術シーズの発掘と評価
・研究開発支援事業 助成金事業の斡旋・受託
・企業のニーズ情報に基づく大学・高専のシーズ発掘
・講演会/基礎講座等の実施
・企業と研究者との交流支援
また、事業の詳細は特定非営利活動法人産学連携学会の学会誌で下記のように掲載されています。
信州TLOが進める産学官連携事業
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsip/13/2/13_2_38/_article/-char/ja/
イノベーション・マネジメント・ハブ形成支援事業の説明会及びマッチングイベントでは、資料として下記が公開されています。
信州TLOが推進する産学連携について
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/29/1415817_6_1.pdf
■iPSアカデミアジャパン株式会社 http://ips-cell.net/j/
iPS細胞に関する研究成果を、迅速に、着実に人類のために社会に還元することにより、人類の健康と福祉に貢献することをミッションにしています。2008年の設立以来これまでに約200社の国内外企業にiPS 細胞関連特許の実施権を許諾しており、日本、米国、欧州諸国、中国などの国々で、非常に多くの企業が創薬や再生医療分野でiPS細胞技術を広く利用しています。本社は京都大学国際科学イノベーション棟 東館207にあり、京都大学が発明したiPS細胞技術の特許の実施許諾も行っています。
イノベーション・マネジメント・ハブ形成支援事業の説明会及びマッチングイベントでは、資料として下記が公開されています。
iPSアカデミアジャパン株式会社 ご紹介 ~大学特許の活用~
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/29/1415817_3_1.pdf
内部TLOでは株式会社東京大学TLOが有名です。
■株式会社東京大学TLO https://todaitlo.com
東京大学の発明と企業をつなぐエージェントです。有益な知を世の中に広めていくことをミッションに、東京大学の研究成果を特許化し、それを民間企業等へライセンスしています。東京大学の100%子会社でり、東大発の研究・知財を産業界を通じて社会に届けるために様々な取り組みをしています。
イノベーション・マネジメント・ハブ形成支援事業の説明会及びマッチングイベントでは、資料として下記が公開されています。
東京大学TLOの産学連携活動について
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/29/1415817_8_1.pdf
「出世ナビ キャリアの原点」では、本田圭子副社長が紹介されています。
東大発の特許を後押し 弁理士の女性副社長が奮闘
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO49667250R10C19A9000000/
SciencePortalでは下記の通りコラムが掲載されています。
日本の産学連携も進んでいるが課題も~ベンチャーや中小にもライセンスを
https://scienceportal.jst.go.jp/columns/highlight/20161025_01.html
また、公益財団法人のTLOもあります。一例として公益財団法人名古屋産業科学研究所が挙げられます。
■公益財団法人名古屋産業科学研究所 中部TLO http://www.nisri.jp/ctlo/
長年の技術移転事業で培った経験値と、研究機関である強みを活かし、従来の特許を中心とした技術移転だけに留まることなく、新たに技術育成を目指した、幅広い活動を進めています。
公益財団法人である産学連携支援機関の役割(多角的産学連携支援の仕組みづくりの提案)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/29/1415817_9_1.pdf
上記を含めてTLOの一覧は下記の文部科学省ホームページに掲載されています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/sangakub/sangakub5.htm
各TLOが行っている事業は異なりますが、技術移転業務は非常に面白くやりがいも高い魅力的な職種です。あまり話題に取り上げられる機会も少ないのですが、先進的なTLOは大きな実績を挙げています。本コラムを通じて技術移転業務やTLOの取組に関心を持っていただければ幸いです。
なお、技術移転については特定非営利活動法人産学連携学会の学会誌「産学連携学」でも取り上げられることがあります。
■大学知的財産の効果的な有用性マーケティングシステム構築に向けた取組み
九州大学の知財業務に関する取組が紹介されています。ライフサイエンス系知財マーケティングシステム登録シートの雛形や運用状況などのデータが掲載されています。
出典:産学連携学/16 巻 (2020) 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsip/16/1/16_1_56/_article/-char/ja
他にも産学連携学の巻号一覧において「技術移転」等のキーワードで検索すると多数の文献が表示されます。ご関心がある方はぜひ閲覧ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjsip/list/-char/ja