文部科学省では2019年より「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度」を進めています。
本制度は、民間事業者が行う研究支援サービスのうち、一定の要件を満たすサービスを「研究支援サービス・パートナーシップ」として認定する制度です。それにより、研究者の研究環境を向上させ、日本における科学 技術の推進及びイノベーションの創出を加速するとともに、研究支援サ ービスに関する多様な取組の発展を支援することを目的としています。
認定要件として、下記が挙げられています。
(1)当該サービスが、研究者の研究環境を向上させ、我が国にお ける科学技術の推進及びイノベーションの創出に貢献するもので あること
(2)当該サービスが、他の取組と比べて優れた特徴を有していること
(3)当該サービスを行う事業者が、大学、独立行政法人、研究機 関やその研究者等と良好な関係(ネットワーク)を構築できるも のであること
(4)当該サービスを行う事業者が、十分な管理運営体制及び財務 基盤を確保していること
(5)当該サービスが、(1)に掲げる要件を満たすことに寄与する事 業実績を有していること
認定の仕組みとして、下記が挙げられています。
(1)認定により、研究者の研究環境を向上させる、研究支援サービ スの利活用を奨励、促進し、研究コミュニティ等に対する認知度を 高める。
(2)研究支援サービスを認定された事業者と文部科学省は、定期 的または不定期に意見交換やネットワーキング等の場を設ける。
(3)将来的に、認定された研究支援サービスのうち、文部科学省関 連事業との連携により、当該サービスの加速が見込まれ、また、連携 対象となる文部科学省関連事業にも貢献が大きいものについて具 体的な連携(金銭的な支援(補助)は除く)を検討する。
公募時の情報は下記に掲載されています。
出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/1422215.htm
本制度を開始する背景として文部科学省の若手有志が「官民協働による新たな科学技術政策について ~産学官の有識者との政策対話を通じた若手職員からの政策提案~」を開催しています。
出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1420855.htm
詳細資料は下記に掲載されています。
出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/__icsFiles/afieldfile/2019/09/04/1420855_2_1.pdf
「政策対話で指摘された主な課題等」として下記が挙げられています。(抜粋)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇官民連携による研究支援・研究環境整備
• 研究現場において、教育研究周辺の雑務が多く、研究者が研究に専念できない状況が深刻化。
• 一方で、ベンチャー企業を中心として、研究者のニーズに応じたきめ細かな研究支援サービスを提供する民間事業者も増加しつつあり、民間サービスを上手く活用して研究環境づくりをしていくことが重要。
• 官民連携するにあたっては、制度的な課題や改善のための具体策を検討していくことが重要。
〇民間資金を獲得しながら(稼ぎながら)研究を進める研究者モデル
• ベンチャー企業の立ち上げ等により、民間資金を獲得しながら研究を進める“稼ぎながら研究をする研究者モデル”は海外ではごく普通のモデルで国内にも浸透しつつある。
• このモデルは、基礎から社会実装までの段階を問わず、研究や概念実証を市場のスピード感や自由度をもって進めることが可能となるが、こうした研究者の産業貢献の活動を適切に評価する多様な評価軸が必要。
• 近年、活発化している民間の研究・インキュベーション拠点も活用し、このような研究者を育成していく方法も有効。
〇民間活力を利用した産学官連携
• 産学官連携人材を組織的かつ戦略的に育成・確保するとともに、民間サービスも活用していくことが重要。
• 科研費や国プロジェクトでは採択され難い研究でも、社会・産業にとって大きな価値がある可能性があり、研究と社会・産業のブリッジ(産学官連携)を進めるため、研究と民間資金をマッチングする機会を拡大していく取組が重要。
• 広報人材についても、組織的かつ戦略的に育成・確保していくことが重要。
〇大学と地域の協働による地域社会変革
• 国や大学等は、ファンド等の民間事業者と連携しながら、アントレプレナーシップ教育、事業化に向けた研究・技術実証支援、起業アドバイス、各大学が成功・失敗事例を共有する場づくりなど、総合的な取組を強化していくことが重要。
• 地方での実証の強みやESG投資の増加を踏まえ、地方大学と地域が協働して、民間資金も活用しながら社会課題解決型のビジネス/プロジェクトを進めていく取組を強化していくことが期待
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
対策を要約すると、「3.今後の具体的取組や取組の方向性について」として、下記が挙げられています。
(1)官民連携による研究支援/研究環境整備
①研究支援サービスを提供する事業者の認定・連携(短期)」
②その他(国プロジェクトにおいて留意すべき横断的事項)(中長期)」
(2)民間資金を獲得しながら研究を進める研究者モデル
①官民連携によるテクノプレナーの育成(短期)
②研究者の多様な評価や官民連携型の国プロジェクトの推進(中長期)
(3)民間活力を利用した産学官連携
①民間からの研究費の獲得拡大に向けた取組(みんなの研究費)(短期・中長期)
②産学官連携支援サービスを提供する事業者の認定・連携(短期)
③その他(独立行政法人における産学官連携や広報の専門人材の育成)(中長期)
(4)大学と地域の協働によるイノベーションを起爆剤とした地域社会変革
①研究シーズの事業化・起業ノウハウ等を官民でシェアリングする仕組み(短期)
②大学と地域の協働による地域社会課題解決型ビジネス/プロジェクトの推進(短期)
(5)産学連携による大学・大学院教育等(短期・中長期)
(6)その他
①産学官の現場ステークホルダーとの政策対話の充実
②民間企業(特にベンチャー企業)等への行政官の派遣・人事交流
③提案型政策形成の活用
民間の力を活用して大学の研究支援を向上させるという視点は極めて重要です。というのも、弊社は1999年に設立していますが、承認TLOとして経済産業省に承認されたのは2003年であり、もともとは大学の研究支援を行うことを目的に設立した経緯があります。当時から大学研究者が研究に集中できない環境は問題点としてあり、大学内での解決が困難だったため、海外大学の学内支援体制の事例をもとにして外部組織としてキャンパスクリエイトが設立されました。下記は2010年の記事ですが、弊社の設立発起人の一人である電気通信大学の梶本誠先生が、会社設立の狙いとして「大学が本来の研究と教育に専念できるようにする」ことにあり、「教育と研究以外のことを頼める会社」を作ることを目的と述べています。また、近年では産学融合が注目されていますが、大学がオープンな環境を作り、双方のコミュニケーションが大切なことにも言及されています。
出典:新菱冷熱工業株式会社ホームページ https://www.shinryo.com/special/contents02_2.html
日本の産学連携が本格的に開始したのは1998年の大学等技術移転促進法(1998年)が大きな契機ですが、およそ20年立ち、民間サービスを活用して大学の研究支援を活性化させるという流れが出来たのは、2022年ごろには研究大学強化促進事業が10年の事業完了を迎えることもあり、非常に重要な要素と考えられます。
なお、弊社の研究支援としては「TLOI2.0に基づく国際出願済み特許の海外展開支援(大学等研究機関向けサービス)」を提供しています。研究環境が悪化する中でも大学に原則として費用負担なく、国際出願済特許の海外展開を支援していきます。あくまでTLOとしての取組を拡張させたサービスなので本認定制度とは別路線ですが、弊社としても継続的に研究支援環境の向上を図っていきます。
本制度の第一回認定サービスとして、38件の申請があったうち、8件が認定されています。
サービス名 | 事業者名 | サービス概要 |
---|---|---|
Impact Science
(インパクト サイエンス) |
カクタス・コミュニケーションズ | 国際的な研究広報サービス (webサイト:www.cactus.co.jp ) |
L-RAD
(エルラド) |
株式会社リバネス | 競争的資金不採択情報等を活用した産学マッチングサービス (webサイト:https://l-rad.net/ ) |
研究機器のシェアリングサービス | 日本電子株式会社 | 理化学・計測装置を従量課金制で研究者に提供するサービス (webサイト:https://www.jeol.co.jp/support/sharing/ ) |
JDream Expert Finder
(ジェイドリームエキスパートファインダー) |
株式会社ジー・サーチ | 若手を発掘できる共同研究探索サービス (webサイト:https://jdream3.com/lp/expert_finder/ ) |
J-DACジャパンデジタル
アーカイブズセンター |
丸善雄松堂株式会社 | 貴重な史料のオンライン提供サービス (webサイト:https://j-dac.jp/ ) |
大学連携プロジェクト 「セキュリテ寄付」 |
ミュージックセキュリティーズ株式会社 | 大学の教育研究への寄付募集支援サービス (webサイト:https://www.securite.jp/ac/UTokyo1/ ) |
BRAVE(ブレイブ) | Beyond Next Ventures株式会社 | 大学等の研究者向け事業化支援プログラム (webサイト:http://brave.team/ ) |
リサイクルネットワーク、マルチベンダーサービス、ラボストックサポート、 ZAICO、ZAI |
リカケンホールディングス株式会社、 日立キャピタルサービス株式会社、 株式会社ZAICO |
研究機器の資産管理から保守メンテナンス、中古売買を実現するパッケージサービス (webサイト:http://www.rikaken-hd.co.jp/nintei/ ) |
出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/1422215_00003.htm
一つずつ概要を記載します。
1)サービス名:Impact Science(インパクト サイエンス)
事業者名:カクタス・コミュニケーションズ
カクタスコミュニケーションズ株式会社は東京を含む世界8拠点にオフィスを構える、国際的な科学コミュニケーションを提供する企業です。本サービスは研究プロモーション事業として下記の通り広報されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2019年に設立されたインパクトサイエンスは、より幅広く研究を伝え普及させることで、研究と研究者、一般の人々、政策立案者と研究との結びつきを強めるための様々なソリューションを提供しています。インパクトサイエンスを運営するカクタス・コミュニケーションズは、国際的な科学コミュニケーション企業であり、他にも英文校正・校閲、翻訳、テープ起こし、論文投稿支援サービスを提供する「エディテージ(Editage)」、ライフサイエンス分野の企業・研究機関向けに戦略的科学コンテンツソリューションを提供する「カクタス・ライフサイエンス(Cactus Life Sciences)」、研究者とジャーナルを結びつけ、学術出版の効率を高めるAI駆動ツール&マーケットプレイスである「パブシュア(PubSURE)」、出版社の事業機会を増やし出版ワークフローを改善するAIツール&ソリューション「アンサイロ(UNSILO)」、最新テクノロジーでカクタスの全事業を推進するイノベーション・研究開発チーム「カクタスラボ(Cactus Labs)」など様々なブランドを運営しています。また、科学技術で世界的な問題を解決する理念を共にするスタートアップ企業の支援も行っています。
イギリス(ロンドン)、アメリカ(プリンストン)、シンガポール、中国(北京、上海)、日本(東京)、韓国(ソウル)、デンマーク(オーフス)、インド(ベンガルール、ハイデラバード、ムンバイ)にオフィスを構え、世界各地から3,000人以上のエキスパートが190カ国以上のお客様をサポートしています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:PRTIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000006186.html
Impact Scienceの英版ウェブサイトは下記の通りです。
2)サービス名:L-RAD(エルラド)
事業者名:株式会社リバネス
L-RADは研究者の未活用アイデアと産業界を結ぶプラットフォームです。下記の通り広報されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
L-RADは、大学等研究機関の研究者が作成した、競争的資金を獲得していない研究申請書(未活用の研究アイデア)と、外部の研究シーズや共同研究者を探索する会員企業とを橋渡しするプラットフォームです。登録された研究申請書は、安全かつ新規性を失わない形で会員企業に限定開示され、企業側から共同研究等のオファーが研究者に直接届く新しいしくみを実現しています。2020年3月31日時点で申請書の登録は1400件を超え、その約70%が会員企業により閲覧されています。
会員企業(2020年3月31日時点):
株式会社カイオム・バイオサイエンス、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社、株式会社ジェイテクト、株式会社ジー・サーチ、大正製薬株式会社、日本水産株式会社、日本ハム株式会社、株式会社フォーカスシステムズ、三井化学株式会社
2017年からは、大学等研究機関単位での連携も開始し、4つの大学とL-RADの積極利用に関する協定を締結しました。連携を行う大学等研究機関においては、申請書の一括登録、URAとの連携体制構築、利用説明会の実施等を通じて、所属研究者の研究資金獲得を支援しています。
連携大学(2020年3月31日時点):
お茶の水女子大学、東京都市大学、徳島大学、武蔵野大学
L-RADとの連携を希望する大学等研究機関・部局からのご連絡、ならびに研究者の皆さまのご登録をお待ちしております。リバネスは、このたびの認定を契機に、大学等研究機関との連携をさらに強化し、産学連携による共同研究プロジェクトの創出を目指してまいります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:L-RADホームページ https://l-rad.net/2020/04/01/a-pras/
3)サービス名:研究機器のシェアリングサービス
事業者名:日本電子株式会社
最先端ハイエンド装置を日本電子株式会社本社・昭島製作所にて企業体を問わずにご利用いただけるサービスです。年間契約による複数回利用や都度利用が選択できます。また、装置毎に各種オプションプランを取り揃えています。下記などの要望に対して活用を提案しています。
・購入するにはまだ早いが使ってみたい
・最先端機器の測定結果が欲しい
・短期間の定期利用がしたい
・スキルアップ&人材育成をしたい
・データの公開を避けたい
例えば下記の研究機器をシェアリングしています。
・JNM-ECZ600R / JNM-ECZ800R 核磁気共鳴装置 ◆2020年4月 運用開始
●ハイスループットなハイエンド原子分解能分析電子顕微鏡
●高効率 158mm2のDual-EDS仕様
●In situ 観察に対応するホルダーを多数ご用意
・JEM-ARM200F NEOARMex 原子分解能分析電子顕微鏡 ◆ 2019年10月 運用開始
●バルク試料でEELS解析が可能
※REELS (反射電子エネルギー損失分光法)
●電池材料における Li の高分解能イメージング
●化学状態分析
・JAMP-9510F フィールドエミッションオージェマイクロプローブ ◆ 2018年11月 運用開始
2プランを提供しています。
1. 実機操作プラン (来社)
2. 遠隔操作プラン (リモート)
なお、日本電子株式会社では2017年から慶應義塾大学理工学部中央試験所(中央試験所長 岡浩太郎)と共同で慶應義塾大学矢上キャンパス36棟産学官連携棟内に「慶應義塾大学-JEOL 高性能分析機器シェアリングモデル実証評価センター」を開設した経緯があります。
出典:@Press https://www.atpress.ne.jp/news/210640
日本電子株式会社ホームページ https://www.jeo l.co.jp/support/sharing/
https://www.jeol.co.jp/news/detail/20170512.1892.htm
4)サービス名:JDream Expert Finder(ジェイドリーム エキスパートファインダー)
事業者名:株式会社ジー・サーチ
研究者データベースの提供サービスです。下記の通り広報されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本最大級の科学技術文献情報提供サービス「JDreamIII(ジェイドリーム スリー)」に収録されている1981年以降に出版された3,800万件以上の論文・学会発表情報を複雑ネットワークの理論に基づいて解析、約100万人の研究者データベースを構築し、研究キーワード・実績(論文・共著者・人脈図等)のレポートを提供します。また、論文には明記されない研究者の特徴(課題解決力、年齢、活動量、人脈等)をAIにより抽出し、企業の技術課題を解決しうる最適な研究者探索を提供します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:@Press https://www.atpress.ne.jp/news/209697
弊社でも人工知能ナレッジマネジメントシステムを運用・データ駆動型産学官連携を推進していますが、本サービスでは論文・学会発表情報に特化していることが特徴です(弊社ではシーズ集や新技術説明会等のWeb情報を広く収集すること、社内情報(研究室訪問結果や技術シーズ調査レポートなど)を扱うことが特徴です。また、データ活用だけでなくシーズの目利き・プロジェクト企画・マッチング・研究開発マネジメントなど入口から出口まで一気通貫で対応するなどサービス領域を広く設定しています。)
参考:弊社事業内容 https://www.campuscreate.com/works/
産学連携のデータベースサービスとしては非常に素晴らしく、認定を受けたことで国内随一のデータベースサービスと言えるでしょう。
5)サービス名:J-DACジャパンデジタルアーカイブズセンター
事業者名:丸善雄松堂株式会社
研究に役立つ貴重資料をデジタルアーカイブ化し提供するサービスです。下記の通り広報されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「J-DAC」は、全国各地の大学や図書館、文書館が所蔵する史資料、企業や機関において現物保管する貴重資料をデジタル 化し、学術・研究機関に向けて配信するデジタルアーカイブのプラットフォームです。研究上、高い価値が認められながら、利用にあた って各種ハードルがあった資料をデータベース化し、契約機関のみがアクセス可能な「有償型」と、一般公開により誰でもアクセス可能 な「無償型」の 2 つの形態で展開しています。また、デジタルアーカイブの構築や公開だけではなく、資料の取り扱いに関するコンサル ティングや、資料調査・整理作業等のデジタル化に際して必要となる種々の作業サポート、原資料の補修・保存、公開後の利活用 の提案まで、アーカイブを基盤とした情報発信の総合的な支援が可能です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:丸善雄松堂株式会社 https://yushodo.maruzen.co.jp/ir/news/2020/release20200407.pdf
6)サービス名:大学連携プロジェクト「セキュリテ寄付」
事業者名: ミュージックセキュリティーズ株式会社
研究を促進するための寄付プラットフォームサービスです。第一弾として「スーパー公募2020」プロジェクトを東京大学と進めています。下記が実施主旨の抜粋です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国の競争的資金や民間のクラウドファンディングは短期的なものが多く、研究者の自由な発想にもとづく挑戦的なボトムアップ研究を行うには、長期的な視野に立った研究投資が必要不可欠です。このような背景をより多くの方に知って頂くため、東京大学基金は、卒業生や関係者だけではなく、多様な方にアクセス頂けるようにWEBサイトを全面リニューアルしました。
今回、この活動を加速させるため、長期的に重要なインパクトをもたらす資金ニーズと社会的課題に対して、出資を通じて解決を追求することで実績のあるミュージックセキュリティーズ株式会社と連携する運びとなりました。それに伴い同社が運営するプラットフォーム「セキュリテ寄付」にて東京大学基金プロジェクトの寄附募集を開始することで、新たな寄附者層へ訴求できるようにいたしました。また東京大学から寄附金領収書を発行するため、「セキュリテ寄付」を通じた寄附者にも税制上の優遇が適用されます。
WEBサイトURL: https://www.securite.jp/ac/UTokyo1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:https://www.securite.jp/news/release?a=50
また、東京大学と連携した「新型コロナウイルス感染症緊急対策基金」なども実施しています。寄付金額に応じて、お礼状、UTokyo FSIキーホルダー、安田講堂への銘板設置などのお礼がなされます。
出典:セキュリテホームページ https://securite.jp/ac/UTokyo2/
7)サービス名:BRAVE(ブレイブ)
事業者名:Beyond Next Ventures株式会社
技術シーズに特化したアクセラレーションプログラムであり、革新的な技術の事業家を目指す大学や研究機関などの研究者/起業家に対し、経営人材候補とのマッチング、事業化実現のための知識や人材ネットワーク・成長資金を提供しています。下記の通り広報されています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■BRAVEについて
当社は、2014年8月に創業した、技術系スタートアップへのインキュベーション投資に特化した独立系アクセラレーターとして、「起業家と共に、大学等の高度な技術シーズを実用化し、新産業創出とチャレンジする人材を多数輩出する事により社会に貢献する」ことをミッションに掲げ、これまでアカデミア発のスタートアップを多数支援してまいりました。これまで、ファンドを通じたスタートアップへの投資を行う他、2016年からは大学等の研究開発機関の技術シーズに特化したアクセラレーションプログラム「BRAVE」(http://brave.team/)を運営しています。BRAVEでは、大学の研究者等から319件の応募を受け、89件のチームを採択・支援してきました。BRAVE卒業生は、BRAVEで得られた支援を活かして事業化を進め、累計で87億円以上の資金調達を行ってきました。(いずれも2020年3月末現在の数値)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:PRTIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000017460.html
同社では下記のように他にも様々なサービス・取り組みをなされています。
◆Co-founders( https://co-founders.team/ )
大学等の技術シーズ・研究者に特化した共同創業者マッチングプラットフォーム。オンライン上のマッチングに加えて、リアルでのサポートにより強い創業チーム作りを支援。
◆Beyond BioLAB TOKYO ( http://biolab.beyondnextventures.com/ )
ライフサイエンス領域のスタートアップ企業に対して、研究開発を含めた事業化支援を提供する場として、2019年2月にシェア型ウェットラボを日本橋に開設。日本では初となる都心型シェアラボを提供。
◆Blockbuster TOKYO(ブロックバスタートーキョー)( https://www.blockbuster.tokyo/ )
東京都と共同で、医薬品/創薬・医療・創薬支援/受託サービスといった領域の創薬・医療系ベンチャーを支援するアクセラレーションプログラムを提供。
◆イノベーションリーダーズプログラム( http://brave.team/ilp/ )
起業家、社内起業家を目指す方に向けた”働きながら” 事業化に挑戦する2か月間のプログラム。
高い志を持つイノベーション人材に対し、現職を維持しながら、将来有望な技術シーズ・スタートアップとの出会い、成長と経験の機会を提供。
8)サービス名:リサイクルネットワーク、マルチベンダーサービス、ラボストックサポート、ZAICO、ZAI
事業者名:リカケンホールディングス株式会社、日立キャピタルサービス株式会社、株式会社ZAICO
非常に興味深い仕組みのサービスです。大学研究室で研究資金が枯渇していることは周知の事実ですが、不要になる機器が多発することもよくあります。特に、大学研究者が定年退職時に研究室を閉める際、高価な機器を廃棄して費用が掛かってしまうことが勿体無いとして大きな問題となっています。また、研究機器が古くなった場合に下取りして次世代機器を購入できれば良いのですが、そう都合よくはいかないという課題があります。このようなサービスがあれば良いのではないか、というのはずっと言われており、数千万円を超える機器も廃棄することも発生しがちであることから、大学の研究環境悪化・経営悪化の最も大きな要因と言われても過言ではないという意見もありました。しかし、流通を担うプレイヤーがいないことはもちろんですが、国の予算で購入した機器の処分が制度上制限されやすいこと、公的事業によって処分制限の規定が異なること(省庁が異なると特にそうなりがちとなる)、共同研究費で購入した機器は共同研究のみで使用する場合がある(大学によって規定が異なる)、手続きを行うための研究者の時間・リソースが足りないことなど、非常に煩雑な理由があり、サービスとしては実現されてきませんでした。私立大学による発光invivoイメージング装置の買取実績もあり、資産管理や保守メンテナンスサービスなど充実していることから、今後普及していくことが期待されます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■ 「国内研究者向け複合支援サービス」の内容
・資産管理(サービス名: ラボストックサポート)
リカケンホールディングス独自のクラウドによる理化学機器資産管理サービスにより、研究資産の状態を適正に把握し、その情報から保守運用計画を立てることができます。
・保守メンテナンス(サービス名: マルチベンダーサービス)
保守運用計画をもとに、リカケンホールディングスが提供する理化学機器の定期メンテナンス等を行うマルチベンダーサービスで、機器を常に正常な状態に保ち、研究環境を向上させます。
・中古売買(サービス名: リサイクルネットワーク)
研究資産を調達する際に、ZAICOが提供するオンラインの中古売買プラットフォーム(ZAI)で中古機器を簡単に検索でき、新品よりもリーズナブルに購入することができます。従来、廃棄されていた理化学機器などの研究資産も同サービスを通じて売却に切り替えることで、研究資金の有効利用を実現します。購入、売却のいずれの際も、リカケンホールディングスが窓口となり、専門知識を有するスタッフがサポートします。また、売却された研究資産は日立キャピタルサービスによって適切にメンテナンスされ、検査設備の整った専用倉庫の最適な環境下で保管されます。中古売買は国内取引を徹底し、技術の海外不正流出を防止、また、廃棄物削減による環境保全にも貢献します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000038326.html
また、本制度の運営事務局である株式会社Publinkより、研究支援サービス・パートナーシップ認定制度イベントのイベントレポートが公開されています。
出典:Publingual
イベントレポートを抜粋します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
変わる研究環境を支えていくために
また、本イベント内では研究機関を取り巻く現況や本認定制度と研究支援サービスにおける課題も議論がされた。まず、岡山大学 副理事の狩野教授は「科学技術を取り巻く現況が大きく変わってきている」と話し始める。
1つ目は「原則的に研究資源は減少傾向にある」ということ。多くの人の認識の通り、人材、資金、地球資源、と様々なリソースが減っている。
2つ目は「研究者の活動に、色々な繋がりが求められ始めている」ということ。研究者単一ではなく、様々な関係性を構築していく必要性が増している。
こうした変化の中で、支援サービス活用に可能性を感じるか、感じるならばぜひ積極的に一歩踏み出すことを考えてほしい、とのことだ。
また、徳島大学の井内准教授は「まだ、研究支援サービスもあまり知られていない。今回認定されたサービスも事前に2つほどしか知らなかった」と認知度の問題に触れた。
その上で本認定制度を通じて研究支援サービスの認知が進むことが期待できること、狩野教授と同じく財源不足や人材不足から研究機関側の負担に配慮する必要性があると考えを話した。
信州大学の阿部准教授は「今後、研究支援サービスは増えてくると、選ぶのも大変になる。そのため、サービス利用者の声が反映され、”本当にいいサービスが認定された制度”を維持することが重要」と、『制度自体の信頼性』をポイントに挙げた。
昨年からはじまった「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度」。
こうした議論も踏まえ、制度の認知度や信頼性はもちろん、研究機関や研究支援サービス提供事業者をいかに多く巻き込んでいけるかが成否を分けるだろう。
検討が進む『科学技術・イノベーション基本計画』と合わせて、日本の研究力やイノベーション創出を促進するひとつのピースになるか。
今後に注目したい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今後も本制度の認定サービスが続々と増える見込みです。新型コロナウィルスは大学経営・産学連携に多大な影響を及ぼしていますが、そのような境地を打破するためには、柔軟かつスピーディーで良質なサービスが研究基盤を支えていく必要があり、弊社だけではなく様々な民間企業が知恵を絞り、一致団結してサービスを普及させていくことが求められるでしょう。