国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)では産学官連携にかかわるジャーナルを毎月発行しており、さまざまな事例や分析・ニュースが掲載されています。
https://www.jst.go.jp/tt/journal/index.html
中でも、弊社視点で産学官連携への理解を深める上でのお勧め記事を下記にご紹介します。ご参考ください。
■科学技術はすでに振興している だから付加価値を付けていくプロセスがイノベーションだ
総合科学技術・イノベーション会議 上山隆大常勤議員インタビュー
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2021/01/2101-03_article.html
科学技術基本計画第6期の策定に係るインタビューが掲載されています。
■産学官連携の心得~門前の小僧の経験から〜(2018年11月号)
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2018/11/1811-09_article.html
共同研究のケース分類および研究費算出の考え方について述べられています。実際に、「人件費」と「保有設備・資産の価値」が算出基礎に大きくかかわってきますので、その点を検討し明確化することは非常に重要です。
■経済産業省 「地方産学官連携に関する実態調査」について(2018年10月号)
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2018/10/1810-03_article.html
URA等が共同研究の進捗管理業務などを行うことにより外部資金獲得金額、件数に好影響をおよぼすことをデータから示しています。コーディネートの現場ではその重要性は日々肌身に感じる事項ですが、データから成果との関連性を示して明らかにするという観点では希有な記事です。(以下抜粋)
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共同研究の件数と金額の増加のための取るべき方策としては、上述のとおり、産学連携本部として進捗管理業務を着実に実施することが有効であると考えられる。また、間接経費の必要性について企業側の理解が進んでいない状況であったが、進捗管理業務などを実施することによって、間接経費は直接経費に含まれない付加価値への投資であるとの認識を企業が持てるようになることも期待できる。
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■「共同研究」をやめませんか?(2018年7月号)
大阪大学 共創機構 産学共創本部 テクノロジー・トランスファー部門長・教授 正城 敏博 氏
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2018/07/1807-10_article.html
2014年度比で2025年度までに企業から大学等への投資を3倍増とすることが政府目標とされていることに対し、その実現に関するデータ分析を行っています。組織対組織にかかる1件あたりの金額ベース層での言及がなされており、大学が外部資金獲得の戦略を立てる上での参考になります。また、教員数や産学連携組織の人員、事務職員のリソースの問題に触れていることも重要です。日本の産学官連携実績が今後も伸びていく上での大きな課題となりうる事項と考えられます。
■さまざまな研究環境を振り返って思うこと 〜CRISPR(クリスパー)の発見〜(2017年11月号)
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2017/11/1711-10_article.html
大学等研究機関における基礎研究の継続の重要性を感じさせる深い記事です。海外でもゲノム編集分野はクリスパー・キャス・ナイン(CRISPER-Cas9)の基本特許が過去のコーエン・ボイヤー特許を思い起こさせるほどの金額でライセンスされています。その実現には長年の積み重ねがもとになっています。基礎研究への投資には戦略が必要となりますが、その価値を忘れてはいけません。
■パナソニックが海外の大学と組む理由(2017年8月号)
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2017/08/1708-02-1_article.ht
産学連携において、パナソニック社が海外の大学や研究機関と組む理由について述べられています。日本の大学の提案姿勢に課題があること、顧客視点・ソリューション視点の重要性が感じ取れ、真摯に受け止めるべき記事です。
■外国人博士課程留学生と企業とのマッチング(2016年12月号)
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2016/12/1612-02-1_article.html
外国人博士課程留学生と企業との採用マッチングを行う上での課題と取り組み事例をデータと現場感覚を踏まえて紹介しています。外国人博士課程留学生には非常に優秀な方もたくさんおり、今後の日本の人手不足問題において重要な立ち位置となる一方、そのマッチングおよび就業後の継続性にはかなりの苦労を伴います。ノウハウの開示と提言がなされている特筆すべき記事です。
■ニューメキシコ大学における産学連携活動と技術移転活動(2015年12月号)
ニューメキシコ大学技術移転&経済開発事務所における産学連携活動と起業支援活動について紹介しています。素晴らしい実績ですが、ファンドレイジングやEndowment Fund(基本基金)口座についての取組み(上手く回っていること)が特筆です。このようなエコシステムの形成は、GAPファンドしかり日本の大学が海外と比べて遅れているもっとも大きな課題のひとつです。
■シュタインバイス もう一つのユニークな産学連携機関(2014年6月号)
政策研究大学院大学 前教授/OECDグローバルサイエンスフォーラム議長 永野 博 氏
ドイツの技術移転機関で大きな成功を収めたシュタインバイス財団の取り組みについて紹介されています。政府資金を投入しないこと、企業の求める課題解決を相当数の複数のエリア・拠点に基づく人的組織体制およびユニークな人事制度をもとに行っていることについて言及されています。1998年にはシュタインバイス大学を立ち上げドイツ最大の私立大学にまで発展しています。このような海外の成功事例は日本では意外と知られていませんが、モデルケースとして大いに見習うべきと考えられます。
■URA のスキル標準がもたらすもの 業績の評価、業種確立、人材育成への貢献に向けて(2013年7月号)
https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2013/07/articles/1307-05-2/1307-05-2_article.html
URAの評価のあり方は日本で導入されたころから主要なトピックです。過去の検討結果を蓄積していきより良い評価方法に導いていくという観点では生かしていくべき情報です。
なお、スキル標準の報告書は下記にまとめられています。
※文部科学省ホームページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1349663.htm
■TLO再考(2006年11月号)
東北テクノアーチ・西澤 昭夫氏、土生木 典男 氏によるインタビュー結果が紹介されています。日米のTLOの成り立ちの違いとTLOの役割の本質について言及されています。昔の記事ですが、大学のトップマネジメントの重要性や産学官連携部門の意義を問う内容となっています。産学官連携業界に入られた方はぜひご一読ください。
https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2006/11/articles/0611-02/0611-02_article.html