イノベーション・マネジメントシステムはISOのTC 279(技術委員会279)が策定する、企業に対してイノベーションの実現を促すための国際標準規格です。ISO56000シリーズとしてISO番号が幾つかありますが、中心としてISO56002が挙げられます。様々な動向・分析があるため、参考情報をご紹介します。
■日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を策定しました
※出典:経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191004003/20191004003.html
イノベーション・マネジメントシステムの国際標準化の動き等を踏まえ、経済産業省ではイノベーション100委員会と共に、企業からのイノベーション創出を加速させる観点から、日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を取りまとめています。本指針では、企業がイノベーションを生み出そうとする際に直面する課題に対して、それを克服するための重要項目(経営者への7つの問いかけと12の推奨行動)、企業の先進的な取り組み、ISOにおける該当箇所等について、今後の経営の変革の一助となるような、考え方や実践方法等を整理しています。
なお、イノベーション100委員会とは、企業がイノベーションを興すための方法を探るために、変革の思いを持ち、行動を起こしている企業経営者が自社のイノベーション経営について自由闊達に議論する場。「イノベーション経営を進める大企業経営者が100人になれば、日本は再びイノベーション国家になる」との思いを持ち、経済産業省、株式会社WiL、一般社団法人Japan Innovation Network(JIN)が2015年より共同運営し、これまで第4期まで開催されています(計44社参加)。
■大企業こそイノベーションを!─国際標準「ISO56000」と経産省の「価値創造マネジメントに関する行動指針」を知る
※出典: https://it.impress.co.jp/articles/-/18890
田口 潤氏より、「ISO56000」とともに「日本企業における価値創造マネジメント」について解説されています。要点が整理されています。
■中間取りまとめ パラダイムシフトを⾒据えたイノベーションメカニズムへ ー 多様化と融合への挑戦 ー
※出典:経済産業省 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon6/1kai/siryo5.pdf
イノベーションを連続的に生み出していくためのメカニズムに関する中間検討結果が掲載されています。6ページ目において「イノベーション経営に取り組むための指針の策定」が示されており、「イノベーションを興すための経営陣の5つの⾏動指針」と合わせて「イノベーション・マネジメント・システムの国際標準化」が取り上げられています。
■-イノベーション・マネジメントシステム-手引
出典:日本規格協会グループ https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=ISO%2056002:2019
2019年版の英語版・邦訳の手引書を購入可能です。
■イノベーション・マネジメント・システムー手引き
出典:ISOホームページ https://www.iso.org/obp/ui/#iso:std:iso:56002:ed-1:v1:en
2019年版の目次と本文の一部を閲覧可能です。購入前に全体像を把握する上で参考になります。
■個人技でのイノベーションは時代遅れに。イノベーションマネジメントの標準化が進む世界の最新動向についてJIN・西口氏が語る。
※出典:eiicon https://eiicon.net/articles/953
イノベーション・マネジメントシステムを推進している一般社団法人Japan Innovation Networkの記事が掲載されています。同社団法人ではイノベーション・マネジメントシステムのアクセラレーションプログラム(https://ji-network.org/activity/#imsap)も提供しています。
ISO56002発行記念としてフォーラムも開催されています。
https://ji-network.org/wp-content/uploads/2019/09/94dc3072b14268b4e3d4c93ec36597f3-1.pdf
■イノベーション創出のマネジメント手法、ISO56002の衝撃
出典:日経XTREND
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00097/00020/
■OKIのイノベーション・マネジメント・システム(IMS)
出典:沖電気工業株式会社 https://oki.com/jp/yume_pro/outside/archives/20200420/20200420.pdf
「IMSを共通言語として共創活動を加速する」として、沖電気工業株式会社におけるイノベーション・マネジメントシステム”Yume Pro”の実践活動がISO56002の箇条に沿って分かりやすく紹介されています。事例として大変参考となります。
なお、沖電気工業株式会社は、
出典:PRTIMES
OKI、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)を全社レベルで構築
国際規格を先取り、全員参加型で「IMSレディ」な会社を目指す
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000443.000017036.html
記事中では下記の抜粋の通り、全社レベルで取り組むこと、および、既存マネジメントシステムとの連携がなされていることが紹介されています。
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OKIは、2017年から取り組んできたイノベーション・マネジメントシステム(IMS)を、あらためて国際規格ISO 56000シリーズを先取りした全社レベルのマネジメントシステムとして構築・運用する方針を決定しました。IMSを導入する企業は欧米を中心に増えていますが、国内においては新規事業推進部門など一部に導入するに留まっており、事業部門を含む全社的なマネジメントシステムとして導入している例は稀です。OKIは今回構築するIMSを、これまで事業のなかで確立してきた品質やセキュリティ、環境などの全社的なマネジメントシステムと密接に連携させ、事業プロセスに取り込んで運用していきます。2022年度には、将来の認証規格ISO 56001にも対応できるイノベーション創出の仕組みを、いち早くグループ全体に実装した「IMSレディ」な会社となることを目指します。
既存マネジメントシステムとの連携
OKIの構築するIMSはISO 56000シリーズをベースとしており、ISO 9001、ISO 14001、ISO 27001に基づき構築してきた品質・環境・セキュリティなどのマネジメントシステムと高い親和性を有します。OKIは、IMSのさらなる改善を図りながら、これらのマネジメントシステムと密接に連携させることで、事業活動と一体化したイノベーション創出の仕組みを実現します。
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沖電気工業株式会社では「OKI Innovation World 2020」のイベントレポートも公開しています。
出典:PRINT&Promotion
「OKI Innovation World 2020」開催 イノベーション・マネジメント・システム「Yume Pro」を解説 イノベーティブな企業へ
■SaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォーム『Throttle』
出典:PRTIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000016318.html
株式会社Relicが提供するイノベーション・マネジメントをITを利用して効果的に行うためのSaaS型サービスについて紹介されています(下記は抜粋)。
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本サービスは新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度、オープンイノベーションやアクセラレーションプログラム等、新規事業やイノベーション創出のための活動に最適化されたSaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォームです。プログラム概要や募集要項を告知するランディングページ/応募フォームの制作をはじめ、ビジネスプランやアイデアの募集・管理や評価・審査〜メンタリングによるブラッシュアップなど、多岐にわたる業務の効率的な運営を実現します。また、組織内に閉じた事業開発だけでなく、外部に広くコンペティションやテストマーケティングを行う仕組みまで、あらゆるプログラムや制度、コンテストやイベント運営に対応可能です。
■Throttleの特徴
①新規事業開発やイノベーション創出に最適化された、国内初のSaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォーム
②イノベーションマネジメントのプロセスを、一気通貫で管理・運用が可能
③単独の企業や組織内だけで行う新規事業開発だけでなく、オープンイノベーションを含めたあらゆる事業創造活動に対応
④アイデアやビジネスプランの管理だけでなく、それを提案するイノベーター人材のタレントマネジメント機能も網羅
⑤Relicの500社以上の支援実績に基づく、制度やプログラムの設計〜審査・メンタリングなどの各種サポートも提供
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イノベーション・マネジメントシステムにおける計画のポイントについても紹介されています。「計画策定における実施事項の検討方法」として「①目的達成時の状態目標を設定する」、「②状態目標達成に必要な実施事項を考え分解する」、「③協力が必要な関係者(部署)を洗い出す、「④計画にバッファを盛り込む」を挙げています。
Throttleは「“競合皆無”の新規事業開発特化のSaaS型ツール」としてcnetJapanでも記事として取り上げられています。インキュベーションテックというキーワードも出ています。
出典:cnet JAPAN
https://japan.cnet.com/article/35149130/
ITツールを用いて新規事業やイノベーションを連続的に生み出していく手法としては、「イノベーションテック」というキーワードも近年では話題になっています。一例として、株式会社電通、株式会社ミーミル、VISITS Technologies株式会社による「-オンラインを活用して短期間で100人以上の専門家から500以上のアイデアを創出可能に-」という記事があります。
出典:福島民友新聞 https://www.minyu-net.com/prwire/PR202004169049.php
下記が取り組み内容の抜粋です。
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今までの経験と知識だけでは先々の予測が難しい現在、新規事業やイノベーションの実現には、多様な事業アイデアの創出と、意思決定者が納得し確信できる事業案の発見が重要となります。「Expert Idea 500」では、企業の新規事業検討において、ミーミル社がグローバルで構築している各業界・職種におけるトップ有識者で構成する「ミーミル・エキスパート」の幅広いネットワークを活用し、日本国内6,000人のエキスパート・ネットワークから選定された100名以上の有識者から、VISITS社の「ideagram」を活用し最先端かつ多様なアイデアを約1ヵ月という短期間に500~1000個規模で高速に収集。その後、収集されたアイデアをもとに電通がカテゴライズや優先順位付けなどを行い、イノベーティブな新規事業のコンセプト創出から具体的な事業の提案まで支援するサービスです。
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記事中にあるideagramは、アイデア価値や人材のアイデア創造力・目利き力を定量化するツールとして、大企業を中心に導入が進んでいるツールです。
出典:日経XTREND https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00263/00006/
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「コンセンサス・インテリジェンス(CI)技術」という独自のアルゴリズムを開発し、アイデアの価値を偏差値として算出できるようにした。その技術を用いた「ideagram(アイデアグラム)」「デザイン思考テスト」はデザイン思考の研修や人材採用などに使えると注目されている。
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イノベーション・マネジメントシステムの導入が進んでいく潮流ととともに、企業の新規事業・イノベーション創出をより効果的・効率的に実現するためのITツールも増えています。将来的には組み合わせての活用も進んでいく可能性があります。