テーマ名 | 高速情報検出デバイス「SLID」の研究開発 |
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企業名 | 株式会社エイ・オー・テクノロジーズ |
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概要 |
当初、SLID(Search-Less Information Detector)と呼ぶ半導体デバイスのアイディアを発案し基本特許を出願するまで行いましたが、実際に製品化するにはモノを作らなければなりません。ただし私自身では開発を行う技術は無く、産学連携を通じて実現したいと思いキャンパスクリエイトさんに相談したところ、最初の段階では専門分野が並列処理の電気通信大学の曽和先生から様々なアドバイスを頂き、最終的に電子回路や半導体回路がご専門の範先生との共同研究にいたりました。 SLIDは今までのコンピュータ処理の常識を一新する全く新しい考え方のコンピューティング技術なので、当初は先生方にご理解いただくのにも大変時間が掛かりましたが、キャンパスクリエイトさんのコーディネータの方に何度もご訪問させていただくよう取り計らっていただいたことで範先生に技術をご理解いただくとともに、信頼関係に繋がったものと考えています。 (技術内容) SLIDの原理を正しくご理解いただくにはしっかりご説明する必要があるのですが、かいつまんで説明すると、この技術はコンピュータのメモリの中から必要なデータを探す処理、つまり検索、照合、認識などの処理を大幅に速くする技術です。CPUで検索、照合、認識処理を行う場合、メモリの全アドレス空間に対して逐次処理を行うので膨大な検索時間が必要となります。それに対し、SLIDに対象となる情報を記憶させておき、SLIDに探したいデータの条件を与えると、SLID自身が該当する全アドレス空間を一括処理で検出するため検索時間も、検索に必要な電力も大幅に削減され、CPUによる検索、照合、認証処理が不要になるので、検索、照合、認識処理の複雑なプログラムが不要になります。 弊社での理論検証の結果、専用半導体化したSLIDデバイスの場合、従来の検索、照合、認証処理技術に比較して単位電力当り100万倍以上高速化できる見通しが得られており、FPGAによるSLIDデバイスでも大幅に高速です。 もちろん、SLIDは検索、照合、認識処理の専用デバイスで、CPUが苦手な、されど非常に重要な処理をSLIDが担う、つまりSLIDはCPUの良きパートナーという位置付けです。 2015年4月に日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社様に特許の製造権及び販売権をライセンスし、同社は2016年1月5日にFPGAを用いた2種類の「高速情報検索デバイス」の製品(SOPf、DBPf)を搭載したシステムをリリースしました。DBPfはデータ検索専用デバイス、SOPfは全文検索専用デバイスを目的とした機器です。このシステムは一例として企業の会計処理や社内文書検索など大量データの管理・処理を大幅に高速化し、企業戦略の立案に資することや事務処理コストを大幅に削減するものと期待されております。 詳しくは下記をご参照ください。 http://www.ncd.co.jp/it/system-integration/irt/ SLIDはデータの検索のみならず画像処理、タンパク質の構造解析処理など様々な用途に活用可能です。今後も用途開発に向けて更なる研究開発を進めていきます。 (キャンパスクリエイトから受けたサポート内容) 当初の範先生とのコーディネートでお世話になったことはもちろんですが、実際に研究開発を進めていく上で公的補助金の活用について相談させていただき、無事採択され、試作品開発に繋げることができました。開発資金が乏しいベンチャー企業でありますので大変に助かりました。また、共同研究を行っていく上でも様々なアドバイスやフォローをしていただきました。 実用化するには、この技術を多くの方に知っていただき事業を立ち上げるための連携先・顧客を探さなければなりませんでした。「イノベーションジャパン」・「JST 新技術説明会」・「先端IT技術が拓く新ビジネス創出セミナー」「電気通信大学のビッグデータ基盤技術紹介と公的プロジェクト活用に向けたマッチングセミナー」での発表・展示など様々な機会を設けていただいたことでネットワークを作ることができました。 ようやく第一の製品を出すまでに至りましたが、今後もSLIDの普及や新たな事業展開に向けて引き続きお世話になりたいと考えております。 (研究者と連携した感想) 電気通信大学・範 公可 准教授はハードウェアシステムおよび集積回路設計の専門家であり、コンピュータサイエンスやコンピュータの利用技術まで大変に博識でSLIDの基本的な回路構成やFPGA並びにASICへの実装を対象とした装置開発、評価に関する研究開発を範研究室にて行っていただきました。 また、海外の展示会(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー:CES展)にJETROの支援を受けて出展するときにも準備をご協力いただくなど、実用化に向けて一体となってご協力いただきました。 IEEEが主催するICCE2012では範研究室に当時在籍していたLe Duc Hungさんが発表され、最優秀論文賞を受賞されました。大変名誉であることはもちろん、企業の立場からすれば世界中の方々に技術を知って頂き、技術に対する信頼感を得、多くの企業から引き合いをいただくことが出来ました。 この度の製品化は範先生のご協力なしには決して為しえなかった成果だと感謝しております。 株式会社エイ・オー・テクノロジーズ 代表取締役社長 井上 克己 |